bingxiang/冰箱

「ビンシャン」と読みます。中国語で冷蔵庫のことです

たそがれ時のみゆき通り

柄谷行人『言葉と悲劇』と厚顔無恥の功徳

柄谷行人講演集成1985‐1988 言葉と悲劇 (ちくま学芸文庫) 作者:柄谷行人 筑摩書房 Amazon 「書く」ではなく「語る」思想家や批評家の可能性について、最近ぼんやり考えるようになった。これは少し前に茂木健一郎『脳と仮想』を読んでいたところ、「語る」小…

柄谷行人『探究I』と結局つかめなかった蜃気楼

探究(1) (講談社学術文庫) 作者:柄谷 行人 講談社 Amazon ぼくは読書メーターというサイトで読書の記録をつけているのだけれど、およそ3年前にこの柄谷行人『探究I』を読み通してその寸評を書いている。だけど、その寸評を読み返しても「え、こんな本だった…

大庭健『私はどうして私なのか』とぼく探しのためのバンジージャンプ

私はどうして私なのか―分析哲学による自我論入門 (岩波現代文庫) 作者:大庭 健 岩波書店 Amazon いつもながらこれは「青臭い」を通り越して、実に「幼稚極まりない」問いかなとも思うのだけれどそれでもいまなおぼくは「ぼくとは何だろう」と考え込むことが…

若松英輔『詩と出会う 詩と生きる』と内宇宙のドライブ

詩と出会う 詩と生きる 作者:英輔, 若松 NHK出版 Amazon 実を言うと先日、詩について仲間内でプレゼンをする機会をもらった。そしてその席でぼくはこの若松英輔の仕事について教わったのだった。若松の『詩と出会う 詩と生きる』では文字通りどのようにして…

『田村隆一詩集』と55年越しのストリートワイズ

田村隆一詩集 (現代詩文庫 第 1期1) 作者:田村 隆一 思潮社 Amazon 言葉とは何だろう。現代詩文庫『田村隆一詩集』を読んでいて、あたかもぼくは書き手の田村隆一の「声」を聞いてしまったようなそんな気持ちになった。それは単に目で読んですんなり腑に落ち…

ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』末尾の訳を翻訳してみた

A boat, beneath a sunny sky (written by Lewis Carroll) A boat, beneath a sunny skyLingering onward dreamilyIn an evening of July - Children three that nestle near,Eager eye and willing ear,Pleased a simple tale to hear - Long has paled t…

菅啓次郎『本は読めないものだから心配するな』とテクストのスープ

本は読めないものだから心配するな (ちくま文庫) 作者:管 啓次郎 筑摩書房 Amazon この文を書くにあたってぼくは自分の部屋を一瞥し、そして愕然とする。というのは、ぼくという人間が実に「雑」にできていることを思い知らされてしまうからだ。何せぼくの本…

ルイス・キャロル『少女への手紙』と稚気の定義

少女への手紙 (平凡社ライブラリー) 作者:ルイス キャロル 平凡社 Amazon 高橋康也・高橋迪による訳がほどこされた、ルイス・キャロルが(主に)少女たちに宛てて書いた書簡集『少女への手紙』を読むと「童心とは何だろう」とあらためて考えさせられる。その…

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』冒頭部の詩を翻訳してみた

Alice In Wonderland (written by Lewis Carroll) All in the golden afternoonFull leisurely we glide;For both our oars, with little skill,By little arms are plied,While little hands make vain pretenceOur wanderings to guide. Ah, cruel Three! …

辺見庸『純粋な幸福』と言葉の濁流

純粋な幸福 作者:辺見 庸 毎日新聞出版 Amazon いまこの国にあふれている言葉とは、はたしてどんな言葉なのだろう。辺見庸『純粋な幸福』はそうした、縮めてしまえば「リアルな言葉」「リアルなこの国の光景」とは何なのかというきわめて素朴でかつ挑発的な…

辺見庸『青い花』と文章が呼び覚ますまぼろし

青い花 (岩波現代文庫) 作者:庸, 辺見 岩波書店 Amazon ぼくの場合、おかしなもので「どうしても小説は読めるのにエッセイは読めない」という作家やあるいは逆に「エッセイは腑に落ちるのに小説はどうも苦手」という人がいたりする。具体的に誰のことなのか…

吉増剛造『詩とは何か』と世界の音を聴く営為

詩とは何か (講談社現代新書) 作者:吉増 剛造 講談社 Amazon ぼくが詩に興味を持ち始めたきっかけは実はごく浅いもので、だから吉増剛造という詩人のこともまったくといっていいほど知らなかった。恥ずかしい話だ。今回、ぼくはそんな吉増の『我が詩的自伝』…

高橋源一郎『銀河鉄道の彼方に』と終わりなき問答

銀河鉄道の彼方に (集英社文庫) 作者:高橋源一郎 集英社 Amazon タイトルが示す通り、この本は高橋源一郎が宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』を下敷きにして書いた作品である。設定としてはいちおうジョバンニとカムパネルラらしき少年たちが登場し、そして冒頭で…